第3章 酔いが覚めたら誰のせい?
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案の定、とでも言うべきか。
目覚めた美咲は、何も覚えてやしなかった。
分かってた。
分かってはいたが、反応は、想像以上のもので。
ここまで混乱を隠せない美咲を見るのは、初めてだった。
だが、目の前で実際に美咲が慌てれば慌てるほど、俺は冷静になる事が出来た。
彼女の混乱、それに乗じて。
どうやら俺の思い描いていたシナリオが嵌まり、上手く事が運びそうだ。
しどろもどろで視線を彷徨わせる美咲を見て、胸がチクチクと痛むのとは対照的に、自然と口の端が上がる。
昨日の、トロリ。と溶けたような表情で俺を求めて来ていた時との落差がすげぇのなんの。
俺の一言、一言に。
美咲は一々顔を青くして、俺の笑みは更に深くなっていく。
「そりゃあ、俺達の年頃の男女がこの状態で、何もなかったっつー方が、不自然なんじゃねぇの?」
「ッ……!!」
そう言った俺の言葉に、美咲は餌を貰う鯉のように、口をパクパクさせる。
あり得ない!と、顔に書いているようで。
あぁ、対処しきれねぇ情報が入ると、そんな顔になんだな。
初めて知ったよ。
ちょっとからかってやるだけで、今まで見た事がない程の怒りを露わにして、食って掛かる美咲が。
可笑しくて、可愛いくて、仕方がない。
からかうのをやめないのは、コイツは絶対に泣かない、と思ったから。
そしてそれは予想通りなわけで。
いや、それ以上の反応に気を良くして、俺は更に追撃を仕掛けた。