第20章 ※アイツと私の特別な休日
結局、ジャンの気が済むまでそのまま過ごして。
解放されたのは、夜の十一時だった。
静かになってしまった宿舎の中、私の部屋を出てお風呂に向かったジャンに促されて、私もよろよろと共同のお風呂場に向かう。
時間も時間で、人が誰もいない中、熱いお湯を被ると。
身体に残るジャンの感触が、流されていく。
湯船に浸かり、空を見上げると、そこには満天の星空が広がっていて、少しずつ頭もスッキリしてきた。
ふぅ。
小さく息を吐き、お風呂場から出て。
部屋に戻ると、ジャンがヤギのミルクを飲みながら、残っていたパンを食器に乗せていた。
滴るジャンの髪から落ちる水滴に、目を奪われたような錯覚がしたけど、頭を振り、それを搔き消す。
せっかくだからと、私もミルクを入れる。
再びベッドに座って、いつもとは違う食べ物と飲み物を飲みながら、ジャンと馬鹿話しをして。
当初の予定とは全く違うけれど、不思議で楽しい休日の夜は更けていった。
少しだけ疲れた顔をしたジャンが、「あー……」と声を漏らしてベッドへと身体を預ける。
「……このまま寝ちまいそう。」
「……いや、アンタいつまでここにいるつもりよ。」
「自分の部屋に帰んの、面倒くせぇ。」
「分かるけどさぁ……着替えもないでしょうに……。」
呆れ顔で言う私に、ジャンはむくり。起き上がって、笑った。
「じゃ、今度荷物持ってくる。」
「は?」
「俺、この部屋に移っていいか?」
思いっきり眉を寄せてジャンを睨む。
……が、ジャンの焦点は、眠そうで、朧げだ。
うん、思った以上、だわ。
多分、半分寝てるよ、コイツ。
はぁ、と盛大な溜息を吐いてから、私は言った。
「絶っ対に、イヤ。」
この一言では収まらず、私は心から嫌だという気持ちを顔にも出しながら続けた。