第20章 ※アイツと私の特別な休日
身をよじって逃れようとするが、もちろんそれは無駄で。
逆にガッチリ、まるで「離してやんねぇよ」とでも言うかのように拘束されてしまう。
ジャンの腕は、こんなに力強いのに……
髪を撫でる手は、嘘みたいに優しい。
「でも、勿体ねぇな。」
「へ?」
「お前の親、さ……損してる。」
「な、にが……?」
ジャンの言葉に、記憶がうっすらと蘇る。
昔から不器用ではなくて、落ち着いて見られていたから、いつしか私の両親は、私を甘やかす事をやめた。
決して不満はない生活をしていて幸せだったけれど、私には甘えられる人がいつの間にかいなくなってしまっていた。
ジャンの体温を感じながらの問答は、苦手だ。
心底イヤだと思えたら……
もっと楽なのに、心のどこかで心地いいと思っている私がいるから、タチが悪い。
ジャンは、するり。私の髪を撫でると、呟いた。
「こんなに綺麗で気持ちいいのにな。お前の髪。」
「……ッ、」
ジャンは、やっぱり、ズルい。
そういう不意打ち、やめて欲しい。
私の頭に、髪に、触れるジャン。
どこか楽しそうで、強く「やめて」なんて、言えなくなってしまった。
お互いの呼吸と心臓の音しか聞こえない、静かな部屋で。
私の髪は、はらりと揺れる。
気を抜くとまた眠ってしまいそうな程、それは魅力的だった。
髪を撫でるのに、上手いとか下手だとかなんてものがあるなんて、知らなかった。
……知らないままでも、良かったのに。