第20章 ※アイツと私の特別な休日
時刻は5時を回っているだろうか。
寂しいカラスの声と共に、足は何故か昔ジャンに教えて貰ったお店に来ていた。
コロネ、サンド、コッペパン、そして日持ちのいいフランスパンを次々にカートに入れて行く。
きっと、ハンジさんもモブリットさんも、あの様子じゃまともにご飯を取ることは出来ないだろうと思って、どんどん追加したら、結構な量になってしまった。
「あと、は。」
フロア内をふらり、気ままに歩いて。
この前ジャンが買って来てくれた、凄く美味しかったサンドイッチを発見し、それもカゴへ。
食べた事のないたくさん種類があるトレーの前で、色々思案してから、また一つ選んだ。
既にカゴはズッシリと重い。
三人分、それ以上入っているから、余計に、だ。
これ以上は持てないと判断し、料金所へと向かった。
財布から出したのは、申し訳ないけど、モブリットさんに渡されたお金。
何やら手間賃も含まれているという。
両手に大きな紙袋を持って、大荷物状態になりながら、店の外に出た。
ざあっ、という音が響いて、街路樹の葉がヒラリと舞った。
秋から冬へと変わるこの季節にしては、冷たい風が吹き抜ける。
……もう、秋も終わっちゃうな。
しみじみ実感し、早くなった日暮れを思う。
そらはもう、茜色に染まっていた。
「どんだけ買ってんだよ。つーか一人か?珍しいな。」
「えっ、ジャ、ジャン?!」
驚きの声を上げる私に、ジャンはしれっと言った。
「それ以外に誰に見えんだよ、馬鹿。」
……突然現れて、この物言い。
うん、そうですよね。
あなたは"オレ様"のジャン様に間違いない。
って、問題はそこじゃなくて。
「何してんの?」
「荷物持ち。」
「じゃなくて!なんでここにいるのって聞いてんの!」
私の当然の問い掛けに、ジャンは顔をしかめる。
「うるせぇな。通りかかったんだよ。」
「そっか。今日は兵団の任務もないしね。」
「……ここのパン屋」
ジャンは顎で私が今出てきたばかりのパン屋を指した。
「街でた時にたまたま見つけて、お前の部屋持ってく時に何回か来てんだよ。」
「そー……なんだ。」
そんな事、聞いてはいた。
美味しいって食べてたから。