第19章 ※特別な休みはお前のせい?
飛びかかってくるんじゃねぇか、ってくらい噛み付く美咲に応戦していたら。
あっという間に、彼女に覆い被さるカタチになってしまった。
いや、断じて意図したわけじゃねぇ……わけでも、ないが。
この体勢になってやっと美咲は状況を把握したんだろう。
我に返ったかのように、弱弱しくポツリと呟いた。
「……ごめんなさい。」
眉の下がった笑顔。
冗談だよね?
助けてくれるよね?
って、期待しているような。
その顔に加虐心が煽られるのは、仕方がねぇよな?
「もう、遅ぇよ。」
本当に手を出してやろう、なんてつもりはなかったが、ちょっとした悪ふざけのつもりで、もがく美咲を見下ろす。
「ジャンー! 本当に申し訳ないと思ってるからぁ!」
その言い方に、これが"お遊び"だと言う事が伝わってくる。
俺が本気じゃないって事を、彼女も何となく察しているようだ。
「あぁ?聞こえねぇなぁ!」
「ごめんっでばー!」
わーん!
と叫びながら手足をジタバタさせる様子は、まるで子供だ。
普段とのギャップに、見た事のないリアクションに、堪らず俺は噴き出した。
「ブハッ!……お前、マジで面白れぇな。」
笑いを止める事が出来ないまま、美咲から身体を引いた。
また一つ、彼女の可愛い一面を見た気がする。
こう言うジャレ合いも悪くない。
俺から逃げられた事にホッとしたのか、美咲は嬉しそうに言った。
「はー、良かった良かった!でも、なんとなく助けてくれそうな気がしてた!」
「……あ?」
思わず俺の口から出たのは、不機嫌そうな声だった。
……んだよ、それ。
お遊びっつーのは分かっちゃいたが、その言い方は何となく悔しい。
俺の声を全く気にする様子のない美咲は、続ける。
「だって、そういう事しようとする時のジャンはねぇ……、」
そう言いながら、クルクル回していた指を俺に向けた。
いや違う、これは何かを宣告するような時の差し方だ。
しかも顔は何故か得意顔。
ニヤリ。
笑ったその表情は、何かを彷彿とさせる。
美咲の変わり様に、ただ目を見つめる俺に彼女は言った。