第19章 ※特別な休みはお前のせい?
中身はただの水だが、乾杯して、食事を始める。
やっぱり、美咲と食うと、普段は何気なく食ってるようなモノでも、格別な気がした。
美味い飯と、くつろげる時間、それから美咲がいるこの部屋の空気感。
満たされていくのを感じながら、上機嫌でパンを頬張っていたら、美咲がポツリ。呟いた。
「……なんでここに、ジャンがいるのかなぁ……?」
それはもう、不思議そうに。
そして、独り言みたいな響きを持って。
俺は動揺しながらも、その意味を問い掛ける。
「あ?何言ってんだ、今更。」
「いや、だってさぁ……、」
思わず眉を寄せた俺を他所に、美咲は「うーん」と唸って考え始めた。
何をそんなに考え込む事がある、と思いながらも、俺は少しだけソワソワし始めた。
冷静に考えて、不思議な関係である事は、明白だ。
俺は、当たり前に俺がいる空気を、当たり前にお前の隣にいる事を。刷り込もうとしている。
その思惑に気付かれてしまったら、
……そして拒否、されてしまったら、と。
目を逸らす事の出来ない不安が、むくむくと膨らんでいく。
美咲の思考を止めるために、俺はわざと軽い口調で言った。
「つーかさ、お前のこの部屋、居心地いいんだよ。それに、一人で食うより、誰かと食う方が楽しくねぇか?」
これは本音だし、頷いてもらうのを見越した質問だった。
美咲は、面と向かって「楽しくない」なんて言える、鋼の心臓の持ち主では、ねぇだろ?
俺の言葉に、ハッとしたように顔を上げた彼女が、ボソッと答える。
「楽しい……けど、」
「けど、って何だよお前。いいじゃねぇか、楽しいならそれで。」
「……そぅ、なのかなぁ?」
畳み掛けるように言った俺に、美咲はまだ首を傾げる。
俺は呆れたような顔を作って、わざとらしい溜息を吐いた。
「何グタグタ考えちまってんだよ、お前は。面倒くせぇな。」
その台詞にガバッと音がしそうな勢いで顔を上げたのは、美咲だ。
「ッ……、それだけは、アンタに言われたくない!!!」
恨めしげに言う彼女に応戦して、俺も眉を寄せる。
「あ?俺の何が面倒っつーんだよ。」
「そういうところよ!」