第19章 ※特別な休みはお前のせい?
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美咲の部屋に一人入り、ジャケットをハンガーに掛けて、食い物と飲み物、そして2人分のコップを準備する。
開かれた窓からはカラスの鳴き声。
俺は自然と出た鼻唄に気付かずにいた、ら。
パタン。
「……なんか、変にご機嫌そうね。」
不意に背後で聞こえたドアの音と声に、振り返る。
美咲はブーツを脱ぎながら、首を傾げていた。
しまった、と思ってももう遅い。
好きな女と休日を過ごせるってだけで、浮かれちまった自分に溜息が出そうだ。
まさか鼻唄までをも聞かれてねぇだろうな?
「どうしたのアンタ。」
「何がだよ?」
「いや、楽しそうだから何かあったのかなぁ、って。」
「…………。」
追い詰められると途端に弱くなる俺。
自分の顔がおそらく引き攣っている事を自覚しながら、吐き捨てる。
「うるっせぇな。どうだっていいだろ、別に。」
答えになっていない事は分かっていた。
そして必要以上に偉そうになってしまった事も。
だが、こんな俺の心情なんか言えるわけねぇし。
照れ隠し、と言う言葉で流してもらえるのなら有り難い。
「……意味分かんない。何で逆ギレなの。」
溜息と共に吐き出された美咲の言葉に、少しだけ申し訳ない気持ちになった。
が、そこですんなり「悪い」なんて言える俺だったら、美咲との関係も、こんな事にはなっていない。
俺はスリッパに履き替えた美咲に歩み寄り、その頭をガシッと掴んだ。
ゆらゆら揺らしながら、彼女に言い放つ。
「いいから早く、食うぞ!準備したんだからよぉ。」
「ちょ、……分かったから、もう!」
不満気に俺の手を振り払った美咲が、ベッドに腰を下ろしながら小さく呟いた。
「……全く、オレ様め……。」
きっと美咲は独り言のつもりだったんだろうが、外のカラスの声に混ざりながら、ハッキリと聞こえた。