第19章 ※特別な休みはお前のせい?
「ちょっと私、ハンジさんのところに寄って来るから先入ってて!」
「あぁ。」
「くれぐれも誰かに見られないようにね!!」
……なんだよ、その顔は。
美咲の言葉に苛立ち、小さく息を吐く。
俺の胸の内なんか知るよしもない美咲は続けて、何気ない事のように言った。
「じゃぁ、手……そろそろ離して。」
「は?」
「もう、兵舎も宿舎もすぐでしょ?」
ほら早く、とでも言うかのように、繋がった手を持ち上げた美咲を、無意識のうちに軽く睨んじまう。
そうやって、"どうでもいい"みたいに扱いやがって……
俺はこうしてお前と手を繋いで歩く事に喜びを感じてるっつーのに、お前は違うんだよな。
そんな風に、いとも容易く手離すくらいのもん、なんだよな。
……いや、お前は悪くない。
悪くねぇんだ。
けど、お前のその何気ない些細な言動に、小さく傷付いちまう俺がいる。
クソッ、本当にバカだ。
八つ当たりにも近い感情のせいで鋭くなった俺の視線に、美咲は、「な、何よ……」と狼狽えた。
「今じゃなくてもいいだろ。」
「は?」
「うるせぇな。いいから早く帰るぞ。」
「……もう、ホント、ジャンって……」
グイッと引っ張るようにして、その手を強く握りしめた。
一瞬だけ美咲の小さな手が強張ったのを感じたが、それ以上の抵抗はなかった。
俺はただただ、彼女の右手を、宝物のように握って歩いた。