第17章 ※アイツの約束あの人の秘密
────────────────
─────────
辺りはもう薄暗くなって来た時間。
ハンジさんの手伝いが終わり、トロスト区の壁の工事に加わった私の周りに、人の気配はまばらだ。
「美咲。」
コツコツと足音が近付いて来た音と共に聞こえた声に、ドキリとしながら振り返ると、リヴァイ兵長が立っていた。
「……また今度、飯にでも行かねぇか?」
目の前のリヴァイ兵長に戸惑いを隠せないのと同時に。
フと、この前の会話が頭をよぎる。
「また誘ってもいいか?」……あの言葉通り、だ。
念のため、近くに人がいないのを確認して、リヴァイ兵長に向き直った。
「はい。解散が早い日にまた行きたいです。」
「分かった。楽しみにしている。」
短く答えたリヴァイ兵長は、穏やかな顔をして、その言葉だけ残すと、私に背中を向けた。
リヴァイ兵長に声を掛けられる。
そのたった一つの事で。
緊張で、機材を動かす手元が忙しなく動いてしまうのは仕方のない事だ。
……リヴァイ兵長から、本当にお誘いが、来た。
遠くなっていく背中を見つめ、その事実にニヤけてしまいそうになるのを耐える為、ぐっと顔に力を入れる。
眉間にシワが寄っている、気が、しないでもない。
けれど、ニヤニヤしているのを、誰にも気付かれたくはない。
念のためにもう一度、自分の周りに人がいないか確認し、深く息を吐いた。
……良かった。
ジャンどころか、104期の姿すらない。
胸を撫で下ろし、そろそろ私も兵舎へ向かおうと、壁を降りる事にした。
気持ちを切り替えないと、“悪魔”に見抜かれてしまう。
取り敢えずは部屋に戻る前に、ハンジさんの書斎にでも寄ろう。