第17章 ※アイツの約束あの人の秘密
『……あぁ、それから。』
付け足すように呟くジャンの口元は、妖しく歪んでいる。
甘くて鋭い、揺らめいた瞳で私を見ていたジャンの表情が変わった。
さっきまで私を包んでいた困惑は、この顔で吹き飛んだ。
だって、この笑みは……
『……嘘は、吐くなよ?どうせバレるんだからな。』
悪魔の、微笑み。
これまでの全て、油断させる為の罠だったんだろうか。
ジャンが私を上手く扱うことには気付いていたけれど、今回は違う。
……感情を揺さぶってくるなんて、タチが悪すぎる。
後悔しても、もう遅い。
私に残された選択肢はもう、“YES”と答えるしかなかった。
『美咲。返事は?』
駄目押しみたいに迫ってきたジャンに、私は小さく頷いた。
満足気に笑う、“悪魔”が視界に映る。
と同時に、その動きは、また激しくなって。
深く深く腰を打ち付け、私の身体に刻まれる。
私はただ、その波に飲まれるしか、ない。
……こうして私は、「ジャンに嘘を吐かない事」を強制的に約束させられた。
……思い出したら、頭が痛くなってきた。
私はお風呂場から上がり、タオルで手早く身体を拭いて、元々着ていた部屋着に着替え、自分の部屋に戻った。