第17章 ※アイツの約束あの人の秘密
……やっぱりあの男、殴ってやりたい。
その思いを何とか堪えて、お風呂場へ向かった。
途中、お腹が減ったと見受けれるサシャとバッタリ会ってしまい、今日の工事の事を聞いてみる。
「この雨ですし、多分昼頃になりそうですね。」
「って言うか、今からパン食べて、また朝食食べるの?」
「へ?パ……パンのようなものはなにも。」
いそいそと部屋に戻るサシャを横目に、お風呂場へ入った。
頭から熱いお湯を被ると、昨夜の記憶が少しずつ呼び出されてくる。
ジャンの熱を、そしてジャンの言葉を……
『……美咲』
優しく囁くジャンの腕の中で、私は必死に身体に流れる熱と闘っていた。
私を激しく攻め立てるジャンは、時折、ぐっと顔を寄せて甘いキスを落とす。
熱に浮かされて朦朧としている私の意識を引き戻すかのように、その視線は鋭く。
まるで私の瞳の奥……
隠した全てを暴こうとしているみたいで。
すぐにでも逃げ出したくなるくらいなのに、その視線に射抜かれたように逸らせない……
そんな不思議な力を持っていた。
『……俺には、権利なんてねぇ、よな……。』
呟いた言葉、私の耳に届いてはいたけど、理解できなくて。
なんの事を言ってるんだろう。そんな事をボンヤリ思う事しか出来なかった。
ただ、ジャンにしがみついて嬌声をあげる私に、マトモな思考を求める方が無茶だ。
『……お前は、お前の好きにしてりゃいいんだよ。……リヴァイ兵長とどこに行こうが、他に男作ろうが……。』
一瞬、ジャンが悲しそうに眉間にシワを入れた気がした。
何かに耐えてるみたい、な。
ボーッとした視界の中、浮かび上がるその切なげな表情に、胸が甘いようでもジクジクと痛みが走り、心が揺られる。
どうして?
ねぇ、ジャン。
何でそんな顔するの……?
そんなの、まるで……
ココロに芽生えた、小さな違和感。
私はそれを、身体の熱から生まれた幻だと思い込む事にした。