第16章 小さなシアワセ雨のせい?
盛大に吹き出してしまった俺に、美咲は顔を真っ赤にして叫ぶ。
今気付いたのかよ。
マジでバカだな、お前。
そういう、ちょっと抜けてるとこ、結構ツボなんだよなぁ。
慌てて床に転がっているズボンを手に取る彼女を見て、笑いが止まらなかった。
「……って言うか、なんでいるの?」
着替えを終えて落ち着いたのか、美咲は疑問を投げてきた。
背中越しのそれに、俺は振り返る。
……が、美咲は眉を寄せて、更に質問を重ねてきた。
「部屋に戻って準備しなくていいの?」
……変なもん見るような目はやめてもらいてぇんだが。
確かに、いつもならそうしている。
だが、今日は外が土砂降りの雨だし、工事はどう考えたって不可能だから、比較的ゆっくり出来るはずだ。
何より、風呂入ったら、なーんか脱力したっつーか。
もうちょい、のんびりしたい気分なんだよ。
朝の時間にここにいるっつーのも新鮮だし、何となく自分の部屋に帰り難い。
コップに汲んだ水を飲み、髪の先に溜まってきた水滴を振り払いながら、俺は彼女の質問に答える。
「あぁ、大丈夫だろ。今日、雨だし。工事はないはずだ。」
「えー…、って、あんた。」
「あ?」
少し低くなった彼女の声に反応し、顔を上げると、眉間のシワが更に深くなっていた。
「……何でお風呂入ってんの。」
唖然、と言った様子で呟いた美咲に、俺の方が首を傾げる。
「はぁ?そりゃ、入るだろ。汗掻いちまったし。」
「じゃなくて!」
声を上げる彼女の言葉を遮るように、少し小馬鹿にした口調で言い返す。
「何今更言ってんだ。風呂上がりくらいでガタガタ言うなよ。もっとスゲェ事してるっつーのに。」
「な、あ、あんた、そのセクハラ発言やめなさいよ!」
「朝から元気だな、お前。」
笑ってしまいそうなのを溜息で誤魔化し、俺は立ち上がった。
美咲の目の前にズイと寄ると、彼女は後ずさりして「な、何よ……」と弱々しい声を出した。
強気な態度がおかしくて、思わず浅い笑みを溢してしまう。
「んな元気ありあまってんなら、今からまたヤるか?」
「はぁ?!」