第14章 ※お前のウソはダレのせい?
そんな俺の中の真意を知るはずもない美咲は、少しだけ申し訳なさそうに呟いた。
「そう、だったんだ……。ごめん。」
あー…
そう来るか。
……素直に謝られたら、これ以上何も言えなくなっちまう。
俺の勝手な目論見が外れた事で、お前が謝る必要なんか、本当はねぇのに。
やりきれない気持ちでそっと手を伸ばし、美咲の頭を掴んだ。
軽く揺すっても、彼女はされるがままの状態だ。
どうしていつもお前は、俺を許すんだよ。
本物のバカか?
……それともただの、お人好しか。
美咲の謝罪に、さっきまでの毒気が抜かれていくかのようだ。
おかげで、いつもの調子を取り戻した俺は、軽い口調で彼女に言う。
「だな。俺を待たせるとか、ホンットいい度胸してやがるぜ。」
「えっ、待ってたの?!」
ガバッ。と顔を上げた美咲に溜息を吐いた。
「待つわけねぇだろ。バカ。」
俺の小さな強がりに、彼女の顔が引き攣った。
……何か、俺はお前に、そんな顔ばっかりさせてんな。
そう思っていたら、黙ったままの美咲が手を振り上げてきた。
パシッ。と軽い音がして、肩に少しの衝撃。
バカにした事への腹いせか、と思いながら彼女の頭を解放した。
「ま。一人で飯食うのも味気ねぇし、誰かと食おうと思ったんだよ。」
「そっか……そうだよね。」
「あぁ。」
俯いて、乾いた喉に水を流す。
美咲も納得したように、パンを手に取った。
俺には、この時間が、必要だった。
この部屋の、隣に美咲がいるという空気感が、あの夜に足りないと嘆いたものの正体だろう。