第14章 ※お前のウソはダレのせい?
「休み前の夜、どこにいた?」
聞きたいようで、聞きたくない。
だが、聞かずにはいられない。
そんな質問に、美咲は僅かに動揺を見せる。
「どこ、って……部屋に決まってるでしょ。」
まっすぐ俺の目を見るようにして答えてくる美咲の瞳は、微かに揺れている。
何かを隠したい。そんな意図が見てとれる。
あぁ、ダメだ。
ズキズキと胸は痛むし、顔が歪んでいくのを止められない。
だって、知ってんだよ。俺は。
お前のその言葉が、嘘だって事を。
お前は……足掻くのか?
今、俺は笑っている。
自分でもよく分からない。
ただ、どんどん口角が上がっていくのだけは確かで。
俺は痛みを堪えている時に、笑える人間だったんだな。と、他人事のように思った。
目前に迫った美咲の顔が、少しずつ怯えを帯び始めた。
俺は、そんなに怖い顔をしているのだろうか。
……でも、そんな事は、どうでもいい。
お前が必死に隠したがっている事、それを暴くまで、俺の笑みは止まらないだろう。
「嘘だな。」
「何でッ……。」
「来たんだよ、俺は。その日の夜、ここに。」
「ッ……な、んで……っ!」
呆然としている美咲の言葉が小さく消えていく。
俺はそこで、はた、と気が付いた。
……この部屋に来た、なんて、言うつもりじゃなかったのに。と。
自分の手の内を晒している事に、今更ながら焦りが産まれる。
彼女が全てを吐くまで、追求を続けるつもりだったのに、今や疑問は向こうから飛んで来ている。
失敗した。とは思ったが、吐き出した言葉は、もう戻せない。
衝動的に動いてミスを犯した自分に呆れながら、俺は取り繕うように、その理由を述べた。
「……やっと終わっただろ、ハンジさんの仕事。頑張ってたし、労ってやろうかと思ったんだよ。」
半分本当で、半分は嘘だ。
ただ、美咲と過ごしたかった。
一緒の空間で、夜を共有したかった。
それだけだ。
そんな勝手な理由。