第14章 ※お前のウソはダレのせい?
飯も食い終わり、俺達の間にはゆっくりとした時間が流れ始めた。
コップの中を空にして、また注ぐ。
……パンだけじゃ腹いっぱいにならねぇな。なんて思いつつ、俺は密かにタイミングをはかっていた。
ハンジさんの仕事はどうなったか聞いてみると、美咲は普通に答えた。
これを足掛かりに、気になっていた休日前の夜の話しを、ぶつけてみようと決意する。
「そういや、エルヴィン団長に、サイン貰いに行ったんだっけ?」
本当は、あの夜の日に居合わせたから知っている。
わざと尋ねて、美咲の反応を窺っていた俺に、彼女は何でもないような素ぶりを見せる。
「あー。あの日、エルヴィン団長いなかったから、リヴァイ兵長が残ってて……。」
「資料は?」
「リヴァイ兵長に渡した、よ。」
「へぇー……。」
気付いているのか、いねぇのか。
美咲は“あの人”の名前を出した時、少しだけ、声がうわずった。
そして、悟る。
やはり悪い予感は的中していたようだ、と。
俺は自然と上がっていく口角をそのままに、コップに水を注ごうと立ち上がろうとした美咲の手を掴んだ。
「……な、に?」
慌てたように振り向く彼女に、目を細めて詰め寄る。
「嬉しいか?リヴァイ兵長との接点が増えて。」
その問いに、美咲は顔色だけで答えてくれた。
火が付いたような赤面。という分かりやすい反応で。
……クソッ。なんて面、してんだよ。
美咲の表情、それがリヴァイ兵長への好意を伝えている。
ふつふつと、腹の底から何かが湧き上がってきたのを感じた。
怒りじゃない。
ただ、悔しくて、やりきれなくて、どうしようもない気持ち。
……その顔が、全部俺だけのものなら良かったのに。
持て余している感情のうねりを堪え、俺は彼女との距離を、更に詰めた。