第14章 ※お前のウソはダレのせい?
俺は、一歩美咲に近付き、彼女の瞳に鋭い視線を投げる。
「やっぱ、何かあったんだな?」
「ッ……何でもないって!」
必死に否定する方が余計に怪しく見えると、コイツは分かってねぇのか?
いや、分かってねぇんだろうな。
こういうとこ、バカだから。
ドロ、ドロ、ドロ。
黒い感情が胸の中を埋め尽くす。
じっと見つめていた美咲の表情を見ていたら、また意地の悪い台詞を吐きたくなった。
俺は美咲の耳元に、ソッと顔を寄せた。
「ま、どっちでもいいか。お前の場合、身体に聞いた方が話しが早い。」
「ちょッ……?!」
慌てふためく美咲の反応に、幾分か気を良くして、ニヤリと笑う。
そういう面白い面、他のヤツに見せんなよ?
……なんて思いながら。
「じゃ、夜に。な。」
それだけ言って、自分の持ち場へ戻ろうとした俺の腕を、美咲が掴み、引き止める。
ぐっと引かれた腕。
俺は彼女に振り返った。
「……ライス系は、やだ。いつもの……パンで、いい。」
少しだけ俯き加減で、俺に訴えてくる美咲。
何かを思い出すような彼女の表情に、嫌な予感が的中していた事を悟る。
別に、飯の内容なんか、どうでもいい。
お前と一緒にいれるなら。
ただ、今ここで、美咲が“誰か”を思い浮かべた事……
その事が、歯痒くて、悔しかった。
「……分かった。」
喉の奥が熱くなる。
何とか絞り出した声を残し、俺はその場を離れた。