第14章 ※お前のウソはダレのせい?
[ジャンside]
コニーが街へ出ようと言う誘いを断り、美咲の部屋に行く勇気も出ず、ただ一人で苦々しく過ごしただけの休みが終わった。
休み明けの今日。
ハンジさんの仕事が落ち着いたからと、壁の工事に加わった美咲の機嫌は、すこぶる良かった。
それは、自分に任された仕事がひと段落したから、という類いのものではないと、彼女の浮かれているような雰囲気で分かる。
休みに入る前の、あの夜。
一体何があったのか……
考えたくはねぇが、おそらく“あの人”が絡んでいるんだろう。
この前まで、何か考えるように険しい顔してたっつーのに、何だよ、その変化は。
俺が何したってそこまで機嫌良くなんねぇクセに。
つーか、俺がこんなにもモヤモヤした気持ちでいるっつーのに、お前は随分と楽しそうだなぁ、オイ。
なんて、彼女からしてみれば、関係のない苛立ちを上乗せして。
あまりに顔色の良い美咲を見ていたら、つい、口を出したくなってしまった。
「……何だよ。やけにご機嫌だな。」
「へ?」
俺の問い掛けに答えた美咲の、間の抜けた声に、頬が引き攣る。
「顔、緩んでるぞ。何かあったのか?」
「え?べ、別になにもないよ?」
本当に何でもない、というような素ぶりを見せる、が。
……ハッキリ言って、それで誤魔化せると思ったら大間違いだからな。
嘘が下手すぎるだろ。
「ふーん……。」
俺は、目を細めて、ガチャガチャと忙しなく機材を動かしている美咲を見た。
逆に美咲は目をそらす。
その動作がぎこちない程ゆっくりとしていて、おかしさを助長する。
いや、不自然だろ。それ。
とはいえ、今ここで問い詰めたところで仕方のない事。
気を取り直した俺は、近くに誰かいないか確認し、今晩の予約を取り付けにかかる。
「ま、後で聞くとするか。パンは飽きたし、街でライス系でも買ってくる。」
「え?……今日、来るの?」
即座に帰って来たのは、拒否を匂わせる返答。
ギリ。
思わず奥歯を噛み、自分の顔が歪んでいくのを、止められはしなかった。