第13章 私の誤解と憧れのあの人
「それにしても……。」
「はい?」
新しい紅茶を頼んだリヴァイ兵長が、意地悪な顔をした。
その雰囲気が、ジャンと少しだけ被って見えて、慌てて脳内で打ち消す。
……このタイミングで、なんであの“暴君”を思い出すの、私のバカ!
心の中で自分に悪態をついていた私に、リヴァイ兵長が続ける。
「顔を見せに来なかった、という割に……お前からも誘ってもらった事はないんだがな。」
「あ……。」
そう来るとは、思っていなかった。
受け身だったのは、私も同じだ。
リヴァイ兵長のギラギラと鋭く光る瞳が、私に絡み付く。
「え、っと……それ、は……誘ってもいいのか分からなくて……。」
真っ当な理由が、何も思い浮かばない。
しどろもどろになって弁解する私に、リヴァイ兵長は何故か余裕そうな表情を浮かべてくる。
「……俺からは誘ったのに、か?」
「う……。」
意地悪な顔、してる。
口元が怪しくつり上がって、なんだか虐められているみたい。
そんな意地悪な問い掛けに、私は降参した。
「……すみ、ません。」
何を言っても、言い訳だ。
俯いて素直に謝った私に、リヴァイ兵長はクツクツと笑った。
「フ……素直に謝られちまうと、どうしようもねぇな。」
「で……も、遠慮してたんで、す。リヴァイ兵長は忙しいからって……。」
「分かってる。お前の中で、俺は“上司”だからな。」
「……すみません。」
項垂れた頭の角度が、また深くなる。
言い返すことすら出来ない。
だって、そのフィルタを完全になくすなんて、怖くて、私には出来ない。
リヴァイ兵長に誘ってもらえて。
一緒に御飯にくる事が出来て。
少しだけ砕けた会話が出来て。
もう、今でも十分、幸せなのに、私。
フィルタを外して、リヴァイ兵長が男性になったら、私はもっと欲張りになってしまいそうな気がして。
そんな事……
怖くて、とてもじゃないけど、出来そうに、ない。