第13章 私の誤解と憧れのあの人
「だって、前と違って、様子を見にすら、来なかったし……。お誘いとか、もうないんだと思って……、私、何かした、かなって……。」
「……待て。」
綺麗な手が、顔の前にかざされる。
その手の形が、ぼやけているのは、私の目に浮かぶ涙のせい。
「……チッ。そんな風に思ってやがったのか。」
そう呟いて、眉間を抑え込むリヴァイ兵長に、胸が熱くなる。
今にも涙が溢れてしまいそうで、ぐっと堪えた。
「……俺はただ、……少し遠慮、しただけだ。」
「……遠慮?」
「あぁ。」
リヴァイ兵長は紅茶を手に取って、残りを流し込んだ。
さっき頼んだばかりで、結構な量があったのに、一息で。
そして、静かにティーカップを置いてから、私の方をじっと見てきた。
「……ハンジの計画に、お前を指名したのは俺だ。」
「え……?」
「……誘いやすくなると思ったが……逆に忙しすぎたみたいで、誘えなかった。……邪魔になるんじゃねぇかと。」
「そんなッ……邪魔、なんて……。」
「そうみたいだな。柄にもなく気を使って、損をした気分だ。」
リヴァイ兵長は、苦い顔をしてから私の方にそっと手を伸ばす。
その指先が、頬に触れる。
そこで初めて、我慢していたはずの涙が、頬を伝っていた事に気がついた。
拭おうにも、私は今、凍り付いたように、ただリヴァイ兵長を見つめることしか出来なかった。
私は、ちゃんと、認められていた?
リヴァイ兵長に?
「……そんな面されると、期待するだろ。」
「え……?」
リヴァイ兵長の小さな呟きが、落ち着いた店内に、淡く、溶ける。
近くにいるからうっすらと聞こえた、けど。
その言葉の意味まで追求出来るほどの、余裕なんて、なかった。
リヴァイ兵長の指が、私の涙をそっと拭ってくれる事に、全神経が集中していたからだ。
「……お前は、不思議な女だ。」
「っ、ごめんなさ……」
「ふっ……。冗談だ。笑え。」
そう言って、柔らかくなるリヴァイ兵長の顔。
「これからはもう、遠慮しない。忙しい時は、言え。」
「あ、は、はい……。」
慌てて残りの涙を拭い、頷く。
さっきまでの事を水に流してくれたのか、リヴァイ兵長の表情はなんだか優しくて、少しホッとした。