第1章 ※それは月夜の酔いのせい?
美咲の腕が床に落ちたのは、ビクつく身体の動きが、少し収まってから。
上下する胸に、幾分かの汗が滲んでからだった。
「……美咲。」
名前を呼んだだけで、愛しくて。
泣きそうに、なる。
酔った勢い。
正当法じゃないなんてぇのは重々承知の事だ。
……でも。
それでも、欲しい。
と、思った。
まだ少し残っている迷いを、高揚感と、何とも例え難い感情で置き去りにして。
薄く目を開いたお前に……
決意を固めるように、小さく笑った。
「……どんな気分だ?」
それは、俺への問い掛けでもある訳で。
幸せで、
切なくて、
嬉しくて、
苦しくて……
「ン……サイコー、かも?」
小さく答えた美咲を前にして、もう自分の欲に逆らえなくなった。
「……はは。」
口から小さく出たのは苦笑い。
色々な感情を誤魔化すように、深い口付けを再び交わし、トロリと薄目を開いたままの美咲の視界を、手で塞ぐ。
とにかく俺の感覚だけを伝えたくて、キスを落としながら美咲の反応だけを注意深く窺った。
「っ……、は、ぁ……ッ」
甘い声が、脳を溶かしていくようだ。
ソッと視界を遮っていた手を離すと、美咲がゆっくりと瞼を持ち上げる。
食いてぇな、なんて思った、上気した頬。あの時より、もっと痺れる甘い顔。
……クソッ。
何でこうも、煽んのが上手いんだよ。お前は。
そんな事を思いながら、美咲の中に入れていた指を抜き取り、ガチガチに固まっている自分の欲を、蜜の端にあてがった。