第13章 私の誤解と憧れのあの人
あれから、予想通りと言うか、なんと言うか。
まさに、“めまぐるしく仕事に追われる日々”が始まっていた。
研究や開発に熱心なハンジさんのお手伝いは、それはもう、想像以上のもので。
中央憲兵から新たに入った情報がある。って言うのも、大きな原因の一つ。
深夜まで作業して、朝はいつもより早く作業スペースに向かう。
宿舎に戻ればその足で真っ直ぐ、自室のベッドに直行してしまう日もある。
ゆっくりとした時間なんてないし、毎日バタバタし過ぎて、余裕がなくなっていく。
心のささくれを、せっかくリセット出来たのに、今度は大きなひび割れでも起こしてしまいそうだ。
……でも、良かったのかも知れない。
書斎で資料の整理をするだけだったら、余計な事ばかり考えて、何も手につかなくなってしまうかもしれないし。
そんな風に思う理由は、突然私の前に現れなくなった、リヴァイ兵長の存在だ。
ハンジさんと一緒に過ごしていても、全く姿を現さない。
何か気に触る事を言ってしまったのだろうか。
何度も断ってしまっていたから、もう誘うのにも飽きたのだろうか。
……でも、本当にそれだけで?
結論の出ない議論を、頭の中で何度も繰り返してしまう。
最後に話したのは、あの団長室から出た後。
その会話を、何度も思い返しては、その理由を探ろうと必死になった。
けれど、何も見えてこない。
あれから、私の心の一部は、ずっと停滞したまんまだ。
……いつの間にか私は、欲張りになってたんだな。
リヴァイ兵長と二人きりで話すなんて、夢物語だった。
ましてや、御飯に行くなんて、そんなの想像も出来なかった。
リヴァイ兵長は調査兵団の唯一の兵士長で、憧れのヒト。
そして私は、ただの兵士。
忙しさに飲み込まれながらも、痛感していた。
これまであった、小さな幸せが失われるという事が、こんなにも辛いものだったなんて。