第13章 私の誤解と憧れのあの人
[美咲side]
「美咲、ちょっといいか?」
「あ、はい!」
私を呼ぶモブリットさんの声。
すぐに返事をし、両手いっぱいに資料を持つ彼に駆け寄る。
「壁の工事資料の件だけど、美咲にもひとつ手伝ってもらいたくてさ。」
「分かりました。でもすみません、さっきハンジさんに資料頼まれてしまって。」
「そうか。いつならいける?」
「んー…、一時間半後、私から声掛けます。」
「ん。了解。」
「すみません。」
ペコリ。頭を下げて、その場から離れる。
とにかく早く戻って、さっきのハンジさんから指摘されたやつの修正をしなくちゃ。
元いた場所に戻り、すぐに資料を手に取った。
エルヴィン団長が中央憲兵から聞き出した内容を、ハンジさんが分析し、図面にして作ろうとしている、新しい槍のような武器。
数多い資料を分け、見やすいように並べ、纏めていく。
……ああ。
作業場が汚い。
片付けたい。
けど、そんなヒマ、ない。
あった、これだ。
……と、忘れない内に訂正し、ハンジさんが言っていた案を書き込んでいく。
一介の兵士がする事じゃないような気がしなくはないけど、これに加わっている事で、自分もこの調査兵団の一員なんだと、深く実感する。
はぁ。とひとつ溜息を吐くと、作業スペースの入り口から声が聞こえた。
「お前、大丈夫か?」
「……ん。大丈夫。」
目を向けると、入り口部分に右手を付き、軽く笑うジャンの姿。
ジャンの労わりの言葉に、苦笑い。
いつも通り笑ってはいるけど、僅かに疲れの見えるジャン。
疲れてるのは、お互い様、か。