第12章 ヒトリの夜は誰のせい?
ぐしゃぐしゃと頭を掻きむしって、また溜息。
何が面倒だ?
って、それは、俺だ。
俺が一番面倒くさい。
美咲の事になると、途端に余裕がなくなる。
冷静な判断が、出来なくなる。
感情に任せた行動ばかり取ってしまう。
自分の本意とは違っていると分かっちゃいても、止められねぇ。
焦っても無駄だ。
今のところ、打つ手は、ない。
冷静な頭はそう判断しているのに、諦めきれない心が邪魔をする。
現に、俺の足はその場に張り付いたままだ。
その理由は浅はかな期待。
……もしかしたら、もうすぐ帰ってくるのかも知んねぇし。
そんな気持ちが捨てられなくて、ここから動く事を躊躇している、なんて。
情けないどころの話しじゃない。
一歩間違えればストーカーだ。って、気持ち悪りぃな俺。
顔を上げて美咲の部屋の窓を見るが、灯りはつかない。
分かりきっているのに確認してしまうのは、どういう理由なんだか。
「……ははっ。ダセェな、マジで。」
呟いた言葉は、夜空に消えた。
……ここでずっと待ってるなんて、かなり不気味だよな。
女子寮を覗いてた、なんてコニーにバレでもしたら、茶化されるのがオチだ。
そんな事を思い、未練を振り切るように、自分の部屋へと向かった。
二人分の食料と飲み物を持った手は、ずっしりと重い。
冷たい風が肌に触れると、また溜息が出る。
いつもなら気分が軽いはずの、兵団の休日前。
なのに俺の心は晴れないままだ。
……約束、しておけば良かった、な。
そんな後悔が何度も巡り、女々しい自分が嫌になる。
あー、ダメだ。
腹減ったし喉乾いたし。
さっさと寝よう。
そう決めて、着いた自分の部屋のドアを開けた。
いつもの部屋、いつもの夜。
普段通りなのに、何かが足りない。
それは、美咲が隣にいる空気。
ツカツカと歩き、乱暴に手に持っていた袋を置き、中からパンをひとつだけ出して、ベッドに横になった。