第12章 ヒトリの夜は誰のせい?
思い出されるのは、つい先日。
少しだけ開いた気がした、美咲の心の事。
舞い上がりそうになるくらい嬉しかった、が。
このタイミングで俺が団長室に伺って、誰がいるのかを確認しに行ったとしても、きっと彼女は不振に思うだろう。
多分、“あの人”が一緒にいるならば、彼女はそれを“良し”としない。
無理に美咲の心をこじ開けたって、仕方がないと分かっている。
美咲には、ちゃんと自分の意思で、俺の方を向いて欲しい。
……矛盾してるっつー事は分かってはいるつもりだ。
何しろ俺は、強引に身体を奪って美咲を縛り付けている。
俺のペースに巻き込んでしまおうと、目論んでいる。
だけどこれはまだ、一緒に過ごす夜の間だけの事。
俺の呪縛が通用するのは、隣にいる時だけ、だ。
リヴァイ兵長と一緒にいる美咲の側に行き、俺が何かをしても、きっと効果はほとんど望めない。
躊躇する理由は他にもあった。
……リヴァイ兵長と、二人きりかも、知れない。
団長室で、まさかそんな事はないだろうとは思ってみても、苦々しい思いが、心を覆っていく。
リヴァイ兵長の鋭い三白眼、そこに見付けた淡い行為がその想像を後押しするからだ。
逆に、もしも俺が様子を伺いに行ったとして。
エルヴィン団長から、「何の用だ」と聞かれたら。
特には何の用事も持ち合わせていないわけで。
……考えたら考えた分だけ、悪い想像が渦巻いて、眠れなくなるに違いはないが。
本音を言えば、今美咲が誰といるのか気になって仕方がない。
確認しに行きたい気持ちが、大きい。
だけど、そこで何を見るのか。
団長室にいる人物から何を言われるのか。
思わずその場にしゃがみ込んで、はぁ。と大きく溜息を吐いた。
「あー。もぅ、面倒くせぇ……。」