第12章 ヒトリの夜は誰のせい?
それから十日ほど経った夜。
「……終わっ、たー……。」
報告がてらに寄った俺が、丁度ハンジさんの研究スペースで見たのは、美咲が思い切り伸びをしているところだった。
ああ。
分かる分かる。
その、やり遂げた後の脱力感。
同調しながら、近くの給湯室で紅茶を作り、美咲の目の前に差し出す。
「おう、お疲れ。」
「ありがとー。」
こちらに向き直った彼女はそれに手を伸ばし、表情を緩めた。
ふぅふぅ。と湯気を払い、ゴクリ。と飲んで、さらに脱力。
そんな中に響いたハンジさんの声。
「美咲ー!後はサインもらうだけだから、帰りに団長室に寄って、もう今日は休んでいいよ!」
バタバタと、なにやら忙しく動いているハンジさんを横目に、思案する。
明日は兵団の休み。
なら、美咲はきっと部屋で一人、パンを齧ってゆっくりしているに違いない。
ここ最近、美咲の部屋に行けなかったフラストレーションが、俺を駆り立てる。
美咲と、一緒にいたい。
あの部屋で。
俺はまた一つ思案する。
壁の工事は順調だが、今日はエレンの調子が悪い。
多分……そろそろこっちも終わりそうか?
近くにハンジさんがいる以上、美咲に今日行く事は伝えてはいないが、大丈夫だ。多分。
俺は自分の仕事を終わらせるべく、トロスト区上壁へと向かった。