第12章 ヒトリの夜は誰のせい?
[ジャンside]
最近、美咲の様子がおかしい。
なんとなくだが。
そう思い始めたのは、仕事が慌ただしくなった直後だった。
ボーッとしたかと思うと、何かを振り切るように作業に没頭していたり。
難しい顔をしている事も増えた。
最近じゃ、書斎に篭りっきりって事は少なくなっていたから、毎回ハンジさんの研究スペースに足を運び、「どうかしたか?」と聞いても「なんでもない。」と言う。
……んな面して、なんでもないわけねぇだろ。
説得力がまるでねぇ顔だな。
その後追求してみても、暫く観察してみても、それ以上の情報は引き出せなかった。
お互い忙しくなっていた事もある。
まぁ、別に気にする程でもねぇか。
なんて軽く思って、大した問題にしていなかった。
どうしてこの時、気付けなかったんだろう。
───恋敵は動き出していたのに。
調査兵団の仕事に追われる日々を送ると、余計に、美咲と過ごした夜が恋しい。
自分でも驚く程に、俺は美咲の部屋で過ごす夜を気に入っていたらしい。
コニーと話しながら食堂で飯を食うのもいいし、街に出て飯を食うのも好きだが、それとはまた違う。
相手が違う、そして漂う空気も違う。
あの空間と、甘い夜。
思えば思うだけ、煩悩は募る。
あーぁ。
腹減った。
喉も渇いたし。
……触りてぇ。
そう思いながらも、うまく時間を作れずにいた。