第9章 思わぬ誘いと憧れのヒト
ジャンにも言われたはずの「面白い」が、全然違う響きで耳に入ってきたことに、密かに動揺した。
同時に感じた、ドキドキと嬉しさと……
少しだけ足りないような、変な気持ち。
それは、きっと、小さな期待。
一緒にこうやって話せる事が、どれだけ凄い事なのか、今更言われなくても分かっている。
私は一介の兵士で、この人は調査兵団の兵士長で。
でも、今のこの瞬間私の隣にいるのは、“兵士長”のリヴァイ兵長じゃなくて、リヴァイ……さん、と言う、ひとりの男の人。
あぁぁああ。
調子に乗って、“さん”なんて言った事に、一人で恥ずかしくなってしまう。
けれど、そのリヴァイ兵長が、私と一緒になって、楽しそう?にしてくれて。
同じものを食べて、美味しいと言い合って、同じように紅茶を飲んで、同じ時間を共有している。
嬉しくて、楽しくて、気持ちがどんどん増していきそうで。
いつの間にか吹き飛んでいた緊張は、代わりに余計な期待を呼んでしまったようだ。
「……歳の事を聞かれると、恥ずかしくなっちまうもんだな。」
「そ、うですか。」
目を伏せるリヴァイ兵長に、私のこんな気持ちは、きっと届かない。
いくら、少しだけお互いの壁がなくなったと言っても、それを見誤るほど、自惚れてはいない。
リヴァイ兵長は私とただ“御飯を食べたかった”だけだ。
ここに来たかっただけ。と言ってもいいだろう。
美味しい御飯と紅茶で、楽しい時間を過ごしたかったのかも知れない。
少ないアルコール、低い度数で、次第に冴えていく思考とは裏腹に、会話は弾む。
「お前、誕生日は?」
「誕生日?……は、先月でした。」
「そうか。色々あって辛かったな。祝いも、しそびれちまった。」
……あ。
左の眉が下がった。
そんな小さな仕草に、言葉に、また胸がときめいてしまう。