第9章 思わぬ誘いと憧れのヒト
そして、翌日。
時刻は午後8時。
私は、先日調査兵団で食事に使った、賑やかなお店の前にいた。
これからリヴァイ兵長と合流すると考えただけで、頭が爆発してしまいそうだ。
目に見えない圧迫感、それは自分の中から生まれる緊張のせいだと、自覚した、時。
人混みを掻き分けるように、私の方に歩いてくる、リヴァイ兵長の姿を捉えた。
その姿を見つけただけで、胸がドキドキして。
リヴァイ兵長は何故か少しだけ息切れしていて。
「待たせちまったか?」
「い、いえ、丁度今来たとこです。」
男性にしては幾分か小さい……けど、とても綺麗な手で、私の手を取った。
その事にビックリして、身体は反応してしまい、繋いでいる手が熱くなる。
……手汗掻かないといいけど。
ホントはちょっとだけ待ったけど、多分、急いで来てくれた姿が、凄く嬉しくて。
頬が緩んでしまわないように努めて、綺麗な手を頼りに歩く。
リヴァイ兵長が気に入っていると話していたお店は、思いの外近くて、多分待ち合わせたところから50mもないくらい。
こじんまりしていて、けれど狭苦しいわけでもなく、とても落ち着いたお店だった。
適度に広く、低めになったカウンターテーブルに、ゆっくり座れる椅子が二つずつ、等間隔で並んでいる。
一緒にいる相手とは近くに、そして他グループとは程よい距離を保てる、そしてなによりも、お店の人の対応が素敵で、好感が持てた。
「いいお店ですね。」
口から出たのは素直な気持ち。
リヴァイ兵長はフと表情が柔らかくなり、マスターが運んで来たお絞りで手を拭う。
「飲み物はどうするか?」
「あ……お水で……。」
私の言葉にリヴァイ兵長は目を細めて、「今日は酒じゃないんだな」と小さく笑った。