第9章 思わぬ誘いと憧れのヒト
そんなダラダラとした関係を続けていたある日。
思わぬ方向、思わぬヒトから大攻撃を受けた。
最近、少し日課になってしまった馬小屋で、調査兵団の馬の様子を見ていた私に忍び寄る足音。
私は、気付かないまま馬小屋の中へと入り、後ろに無造作に置かれている餌の整理をする。
コツン。
石が落ちるような、小さな音が近くで聞こえたような気がしたけど、特別気に止める事もなく、黙々と世話をしていた私の耳に、今度は、確かに声が聞こえた。
「おい。」
「ッ?!!!」
少しだけ威圧的な低音。
胸がドキドキするような、ソワソワするような、声の持ち主。
私はそれを知っていて。
なんかの間違いなんじゃないかと思って、一度、ギュッと目を閉じた。
深呼吸して、瞼を開いて、恐る恐る、振り返る。
そこには、小石を片手に持っている、憧れのヒトがいて。
……な、な、何でこんなとこに、リヴァイ兵長が?!
ハ……ハンジさん、は、ここにはいないけ…ど……?
横長の馬小屋の中、挙動不振にキョロキョロと周りを見渡しても、人がいる形跡はなくて。
先ほど掛けられた声が、私に対するものだった事を頭が認識したのは、それからだった。
慌てて馬小屋から出て、リヴァイ兵長の近くに、
……行こう、とはするけど。
多分、兵団服には動物独特の匂いが染み付いてるだろうから、策のところで踏み止まって、俯いてしまった。
心臓はおかしな音を立ててるし、多分、顔は赤いだろうし、服は……臭いだろうし。
……あぁ、何やってるんだ。
なんて、頭を抱えていたら、衝撃の言葉を頂いてしまった。
「明日の夜は開けておけ。先日話した店に連れて行く。」
「はいッ……へ?」
返事が先に出たのは、条件反射であって、事の事態を全くと言っていい程に、頭はおいついていない。