第9章 思わぬ誘いと憧れのヒト
混乱して、意味が理解出来ていない私は、何度も頭の中で、リヴァイ兵長が言った言葉を、繰り返した。
その意味を理解出来ても、信じられなくて、それでもここには、私しかいなくて。
「先日」とは、この前の兵団の催しの時の話だ。
話していたお店と言えば、それしか、ない。
あの日リヴァイ兵長が言った“気に入っている”お店。
もう、暗記してしまうんじゃないかってくらい、リヴァイ兵長が私に言った言葉を、頭の中で繰り返して。
意味を取り違えていないか、勘違いをしていないか、慎重に思考を巡らせた。
けれど。
どう頭の中で整理しても、どう受け取っても、“食事のお誘い”としか思えない。
う、う、う、
「嘘、だ……。」
自分にしか聞こえない声で、思わず口から本音が漏れた。
繰り返し確かめた“現実”があまりにも衝撃的過ぎたから。
目の前から入ってくるリヴァイ兵長の存在と言葉は、確かに私へのお誘いなのだ。
あの憧れのリヴァイ兵長から、御飯を食べに行こうと、誘われているのだ。
舞い上がるより先に、疑いの気持ちが襲ってくるのも、無理はない、と思う。
「……返事をもらいてぇんだが。」
「あ……ぁ……。」
なにをどんな風に言葉にするべきか。
散々迷って、試行錯誤した挙句に、口から出たものは、かなり弱々しかった。
「……分……かりま、した。」
そう言った私に、リヴァイ兵長の顔が、少しだけ緩んだ、気がして。
目の前にいる“憧れのヒト”は、「楽しみにしている。」とだけ残して、私に背中を向けた。
少しずつ遠くなる兵長の背中を見つめながら、緊張と興奮で、どうにかなりそう……
だった。