第4章 〜片翼の折れた天使〜
おそらく、監禁されていた際に受けた暴力の跡だろう?
死神『聞いてもいいかい?
君は、あの時、怪我を負った私に口づけをした。
すると、傷が消えた。
察するに、体液を取り込むと傷が癒える。
それがあの国が秘密にしていた不死の戦士のからくりだね?』
彼女はコクリと頷いた。
『あの日………。私が初めて下界に降りた日…。
一匹の子鹿が人間の作った罠にかかって、足を怪我してたの。
どうしていいか分からず、涙を流すことしかできなかった。
すると、私の涙が子鹿に当たった瞬間、傷が消えた。
それを、罠を張った人間に見られて…。
逃げようと思った時には、銃で翼を…。』
死神『それであの国に売られた。そういうことか。
で、君はここを下界と言ったね?それに、君は帰れないとも…。
私は神を信じない主義だが、まさか天界などという世界が存在するのかい?』
彼女は黙って見つめている。
死神『信じ難い………。だが、君の翼、能力を見て信じない方が不自然だ。
ちなみに、そのちからは、君の体液なら何でもいけるのかい?』
『おそらくは…。血や唾液、涙など。』
死神(おそらくあの国では、彼女の涙が怪我を治すと思われていたのだろう。
彼女の力を目撃した輩からその話を聞き、彼女に暴力や恐怖で支配する事で涙を採取していた。
だが、体液全般という事が知られていれば、彼女はもっとひどいしうちを…………。
それこそ男による性的暴行を受けていてもおかしくない。
不幸中の幸いというべきか…。)