第4章 〜片翼の折れた天使〜
何故だか理由は分からない。
依頼を受けた国には、王と幹部の暗殺に成功。
不死の戦士の手かがりはつかめなかったと報告をした。
彼女を自分のアジトに連れて帰ってきたのは、傷を治してもらったから………。
いや、ただ、あの場に残していけなかった。
特に理由はなかった。
あれから丸2日眠っている。
彼女『うっ…』
死神『目が覚めたか。何か食べるかい?』
返事はない。
死神『名前はあるかい?』
彼女『………。』
ひとまず食べなくてもいぃ。パンと水だけ置いて出かけよう。
そう思った時……。
『まぁ………。』
そうポツリと彼女がつぶやいた。
死神『そうか。まぁ。君はどこに住んでいた?住んでいた所まで送ろう…。』
未だ彼女の背中から生えた翼が一体何であるのかは、死神のあらゆる知識を持ってしても理解には到底及ばないが、とりあえず彼女を元いた場所へ送り届けよう…そう思っていた。
『帰れない…。』
死神『そんなに遠い所から来たのかい?』
『………………。』
死神『なら、できるまでその近くまで送ろう。』
『ちがう…。私はもう……。』
そう言うと、彼女は折れた片翼を触る。
まさか………。死神は一瞬よぎった考えをすぐに頭の中で払った。
この彼女の姿すらまだ受け入れ難い状況の中、果たしてそんなものがあるはずがない。
死神『君は一体……何者なんだ?』
『…………。あなたの名前は?』
死神『私に名前はない。名も、自分の生まれた日も、何も知らずに育った。
ただ、君も知っての通り、私は殺し屋。
もう何人殺したか覚えていない。そんな中ついた名前が死神…。』
『死神……。』
死神『怖いかい?』
『いえ…。私を助けてくれた。
ありがとうございます。』
そう言った彼女は、腰まで伸びた栗色の髪を揺らし、深い桃色の瞳で真っ直ぐに死神を見てにっこり笑った。
透き通る色白の肌には無数の痛々しいアザの跡がある。