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天才のオレに惚れなさい

第1章 天才と英語の小テスト



 桃浜はいつもオレに張り合う。

 この学校に入学してすぐのころ、実力試しみたいなテストがあった。オレはそこで1位を取った。2位は桃浜だった。
 それからずっと、ことあるごとに「何点だった?」「何位だった?」と聞いてくるようになった。

 いつもオレが1位で、桃浜が2位だった。

 桃浜がオレに張り合いはじめて数週間後くらいだったか、
「伊豆って天才なんだぜ」
と、赤坂が桃浜に言った。
 赤坂とオレは付き合いが長い。オレが昔から勉強も、スポーツも、大体なんでもこなせることを、赤坂は誰より知っているのだ。

 天才、という言葉を聞いた時、桃浜はちょっとだけ顔をしかめた気がした。

 そしてその日からは順位比べの後に
「天才はいいね」
と必ず言うようになった。

 もう日常茶飯事だ。赤坂がそこかしこで「伊豆は天才」なんて言って回るものだから、他のクラスメイトからも「伊豆は天才だもんな〜」と、冗談混じりに言われる。それが定番ネタになった。

 オレからしたら全くつまらなかった。

 わかる問題を解いたらテストが100点になっただけ。自分のペースで走ったらマラソン大会で1位になっただけ。思ったままに絵を描いたらコンクールで入選しただけ。
 何の努力もしてないから、何の達成感もない。何をしても退屈なだけだった。

 それを赤坂に言ったら、
「お前それ絶対ヨソで言うなよ〜、恨まれるぞ」
と、ヤレヤレ顔で言われたものだ。
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