第1章 天才と英語の小テスト
声のする方へ顔を上げた。オレの席は窓際にあるので、日光が少し眩しい。
開け放たれている窓から、爽やかに強い薫風がいっぱいに吹き込んでくる。
ブレザーの裾から出たスカートをその風に揺らしながら、オレの斜め前に、桃浜が立っていた。
「答案、見せてもらってもいい?」
ゆるやかに微笑みながら桃浜はそう言った。
オレは桃浜に答案を渡した。桃浜はしげしげとそれを眺める。
「100点なんだね。私は1問だけ間違えちゃったの。伊豆くんは凄いなあ。敵わないや」
桃浜がオレに紙を返してくる。オレは黙ってそれを受け取った。
「天才はいいねえ」
笑顔を崩さないままそう言って、ヒラリと身を翻し、桃浜は自分の席へ戻っていった。