第1章 天才と英語の小テスト
「天才はいいよな」
日に2,3回はその台詞を言われる。
言われて嬉しいと思ったことは一度もない。
「英語で満点とか羨ましすぎだよ。お前実は日本人じゃないだろ」
隣の席に座る赤坂が、オレの答案用紙を覗き込みながら言った。
今しがた終わったばかりの授業で、英語の小テストが返されたのだ。オレの答案は赤い丸で埋め尽くされていた。
「オレは…オレなんて…。うっ、追試イヤだぁ〜」
赤坂は絶望的な顔をしながら、バツだらけの自分のテスト用紙を折りたたんだ。
「なあ伊豆、勉強のコツ教えてくれよ」
「コツなんて特にない。教科書読んでたら大体わかるだろ」
オレが真顔でそう返事をしたのが赤坂は気に入らなかったらしい。
「普通そんなことできないから!ハァ〜、天才はいいよなあ…」
ブチブチと文句を垂れながら、放課後の追試と戦うために教科書とにらめっこを始めた。
オレは自分のテスト用紙を適当にたたんで鞄にしまおうとした。その時
「伊豆くん、テストどうだった?」
と声をかけられた。