第1章 三角形 case1
こういう時、一緒にいて笑ってくれるのは多分黒尾さんの方だろうな。
京ちゃんは黙って突っ込みすらせず、煎れ直してきそうだ。
何気に人が傷付く事をサラッとやるからな…。
これ一つで黒尾さん、って決める訳にはいかないけど、似ていても違う所は違うし2人を比べる事は出来るようだ。
でも、人を比較する事自体がいけない事な気がして、自己嫌悪に陥りそうになる。
今は選ばなきゃいけない訳で、どうしてもそうしなきゃならないのに。
「お風呂でも入ろうかな。」
答えが出ない事を考え続けても無駄な気がして、気分を変えようと立ち上がった。
着替えを用意して風呂場に入る。
シャワーを浴びている間は、余計な事を考えずに済んだ。
人を比較するという嫌な考えも、選ばなければならない追い詰められた気持ちも、水が全て流してくれる。
少しだけだけど、落ち着きを取り戻してお風呂場から出た。
リビングに出しっぱなしにしていたカップを片付け、荷物を持って部屋に戻る。
ベッドに寝転がって携帯を確認した。
メールと着信が入っている。
相手は簡単に予想出来た。
親指で携帯を操作して履歴を見ると思った通り、2人ともメールも電話もしてきている。
でも、もう今日は余計な事を考えたくなくて。
相手を確認しただけで、メールの内容すら見ずに眠りについた。