第1章 三角形 case1
翌朝、目が覚めると部屋の中に違和感を感じる。
寝惚けた顔で部屋中を見回すと、明らかに普段は部屋にないもの…いや、人。
何故か京ちゃんが、扉の横に座っている。
「…おはよう。」
私が驚きで固まっても、向こうはさも当然かのように朝の挨拶を口にした。
「…なんで?」
挨拶よりも先に疑問だけを返す。
「迎えに来るよ、って言ったよ。メールもしたし。」
言われて思い出したように携帯を手にした。
「…って、そうじゃなくて。なんで私の部屋にいるの?どうやって家に入ったの?
…しかも、今まだ5時だよ。」
昨日の話とか、メールとか私の疑問には関係がない事に気付く。
その上、携帯を開いて表示された時間に更に驚いた。
「…オバサン、さっき帰ってきた。家の前で鉢合わせたから。
俺が娘を襲うとか考えてないよね、あの人。だから、簡単に家に上げるし、部屋にも入れる。」
京ちゃんは質問に淡々と答えながら妖しく笑っている。
「親子揃って無防備。」
悪寒がした。
立ち上がってベッドに近寄ってくる京ちゃんを見て隠れようと布団に潜り込む。
この程度の抵抗では止める事は出来ずにあっさりと布団は奪い取られた。
自分の熱がこもった布団を剥ぎ取られて冷えた空気が体にまとわりつく。
寒さからではなく、恐怖で縮まった体を両腕で抱き締めた。