第1章 三角形 case1
それを伝える為に、私なりに精一杯の誠意を表したつもりだったけど。
「好きな子が怪我してるの知ってて放っておけないし、帰りも部活で遅くなるのに一人で帰らせる訳にはいかないよ。」
あっさりと私の意見は却下された。
「今まで通りに生活してたら変わらないよ。京ちゃんはお兄ちゃんのまま、じゃ嫌なんでしょ?」
ここは譲れないとばかりに嫌な事を言ってみる。
「人の話、聞いて。怪我が治るまでは迎えに来るよ。遅くなって外が暗くなってから帰る時は送る、って意味。
お兄ちゃんのままでいる気がなくても、さくらを心配する気持ちを表現しない理由にはならないと思うけど?」
向こうも譲れないようで、素早く言葉を返された。
私と違って京ちゃんは考え事をしないのか、考えても答えを出すのが早いのか。
なんとか考えて、また嫌がっても無駄そうだ。
どうせ、すぐに返されてしまう。
「納得したよね?じゃ、俺帰るから。」
何も返さない私を見て、勝ち誇ったような顔をする京ちゃん。
話を終わらせると、さっさと帰っていってしまった。