第1章 三角形 case1
京ちゃんは私が落ち着くのを待っているのか、黙ってこちらを眺めている。
慰めたりする気はないようだ。
「…こう、いう時って…頭でも、撫でながら、優しくしてくれるもの…じゃないの?」
あまりにも冷たく感じる行動に、また思ったまま発言してしまった。
嗚咽が混ざって言葉が途切れ途切れだけど、ちゃんと京ちゃんの耳には届いたようで、行動と同じく冷たい目に変わる。
「しても良いけど。…狡いよね。さくら、謝らなくていいよ、って俺が言うの期待してるでしょ。それで、優しいお兄ちゃんに戻ったら満足?」
図星だった。
表情で正解を示してしまう顔を見られないように俯く。
「俺、伝えたからには兄妹に戻る気はないよ。」
声も冷たい。
それは、覚悟の表れのような気がした。
「…分かった。じゃあ、今までみたいに迎えに来たり送ったりしなくていいよ。
兄妹でも恋人でもないんだから、おかしいでしょ?
…もし、京ちゃんを選んだら、その時からまた、お願いします。」
涙もいつの間にか止まっていて、顔を上げると真っ直ぐに京ちゃんの顔を見る。
今まで通り、甘えたりはしない。
京ちゃんに兄を求めない。
幼馴染みって関係は変わらないけど、ちゃんと男としての京ちゃんを見ようと、覚悟を決めた。