第1章 三角形 case1
でも、何て言えば良いんだろう。
待てないなら恋人としては付き合えない。
駄目だ。
待って貰っても京ちゃんと付き合うか分からない。
やっぱり京ちゃんは幼馴染みだからそう思えない。
これも駄目。
さっき自分ですぐに答えは出ない、って言った癖に気持ちが変化する事がないって決めつけてる。
いっそ、お決まりのお断り文句一つで終わらせてしまおうか。
理由も言えないなんて、京ちゃんには悪いと思うけど。
「そんなに考えなくても待つから大丈夫。」
京ちゃんの声で考え事の世界から現実に戻される。
「…京ちゃん、ごめん。あ、いや、付き合えないって意味じゃなくて…誤解したっていうか。
…あんな言い方されたら考えても無駄だから俺を選べって言われたみたいで…。」
急に緊張から解き放たれて身体中の力が抜けた。
ついでに考えが漏れないように閉じていた口も緩んで、思いつくままペラペラと喋り出す。
「…俺の方が良いよ。それは本心で、さくらが感じた通りの意図。
普段は鈍いくせに分かったんだね。」
つい、で滑った口は言わなくていい事まで喋ったようで。
気付いていたなら答えろよ、とでも言い出しそうな雰囲気だった。
「…京ちゃん、待つ、って言ってくれたけど、やってる事は逆じゃない?…急かしてるよね?」
疑問が勝手に口から出てくる。
考え込んで黙るか、思い付くまま喋るかしか出来ない単純構造な自分の口が恨めしい。
「…俺がさくらを意識したのは中学生の頃。具体的にいつから、とは言えないけど。」
返ったのは回答ではなくて、私をどうして女として見るようになったか、だった。