第1章 三角形 case1
誤魔化し方を考える気力なんかもうない。
それよりも考えなきゃいけない事が沢山あるんだ。
「さくらが好きだよ。妹とか、家族とかじゃなくて、恋愛対象として。」
試合中でしか見ない、真剣な顔をしている。
「京ちゃん、私ね、黒尾さんにも言ったの。京ちゃんも黒尾さんも好きだよ。
私、優しくされたり構ってくれたりすると誰にでもすぐ懐くの。」
今回ばかりは、黙ったら駄目だ。
逃げても、助けてくれる対象がいない。
「分からないの。そういう、誰にでも言えちゃう好きと恋愛の好きの違い。
だから付き合うとか考えた事もなくて。…すぐに答えは出せないの。」
謝りたいけど、このタイミングの‘ごめんなさい’は誤解を招きそうで謝れない。
京ちゃんには、付き合ってって形の告白はされてないけど、保留の意思だけ伝えないと。
「どう考えても、さくらの性格なら中々会えない黒尾さんより、俺の方が良いと思うけど。」
京ちゃんの顔は、変わらず真剣で。
その口からは、自信たっぷりの発言が飛び出した。