第1章 三角形 case1
夕食の時間がやってくる。
私を含めた何人かのマネージャーが食堂の中で忙しなく動いていた。
自主練をしている人達もいるからか、まだ戻ってきていない人もいる。
そんな中で、京ちゃんを探してしまうのは最早癖で。
合宿中は絡まないと決めたからには何もしないのだけど、見付けてしまうと無意識にそちらへと歩いていってしまう。
「小熊ちゃーん、オカワリ!大盛りでー!」
京ちゃんの隣には梟谷の主将が座っていた。
良いタイミングで近付いてきたとばかりに空の皿を差し出している。
「木兎先輩は、よく食べますね。」
他愛もないやりとりをしながら、空いた皿を受け取った。
隣の京ちゃんは、私には目も向けずに平然と食事を進めている。
「赤葦ー、小熊ちゃんと喧嘩でもしたかー?」
普段の私達を知っていると、近くに来ても一言も喋らないのは違和感があるようで。
木兎先輩は、思った事をただ口に出しただけだろう。
京ちゃんに向けられた質問だし、私は頼まれたお代わりを取りに行こうとその場から離れた。
「…何もないです。」
背中越しに聞こえた声が、何故か怖かった。
それには木兎先輩も気付いたようで、話に踏み込む事はなかった。
「はい、どうぞ。」
お代わりを持って再び席に近付く。
やっぱり私と京ちゃんの間には一言もない。
木兎先輩は不審そうに私達を交互に見ているけど。
さっきの例があるからか、何も聞きはしてこなかった。