第1章 三角形 case1
家に入って一番最初にやる事。
京ちゃんに電話。
黒尾さんは本気って言ってたけど、出会って数日。
しかも、迷惑ばかり掛けてる私なんかを、なんで好きになったのか分からない。
京ちゃんを恋敵って言ったし、それは本人も否定してなかった。
それなら、京ちゃんの好きな人を聞けば解決する…筈。
でも、京ちゃんも私を女の子として好きって言ったら?
今までの自分の鈍さと、無神経な言動を後悔する羽目になりかねない。
だからって、このまま何もせずにいたら答えなんか出せない。
それは、とても失礼な事だ。
リビングのソファーに座って携帯を両手に掴み、発信ボタンを押した。
携帯を耳に当てるとコール音が聞こえる。
数回で通話に切り替わった。
『…はい。』
「あ、京ちゃん?……用事あったんだって?ごめんね、ご飯とか付き合わせちゃって。」
携帯越しに聞こえる声に、何と切り出せばいいか分からず、普通の会話をしようとしてしまう。
「もう用事は済んだの?今更だけど電話大丈夫だった?」
違う、言いたいのは、聞きたいのはこんな事じゃない。
『駄目だったら出ないよ。』
「そうだよねー。」
普通を続けるのにも限界がある。
電話だから何か喋らなければいけないのに、話を途切れさせてしまった。