第1章 三角形 case1
帰ろうと歩き始めるも、走ったからなのか、捻挫した足が痛い。
引き摺ったら心配掛けるのは分かっているし、走った事をまた怒られるかもしれない。
取り敢えず、ゆっくりと歩いていた。
「…ん。」
歩き方に違和感があったようで、手が目の前に差し出される。
一人で歩けます、と意地を張ってもバレてるんだろうな。
「俺が手、繋ぎたいんだよ。少しくらい、いいだろ?」
私が掴まろうか迷っているのもお見通しで、強引に手を握られた。
少し体を近付けて、寄り掛かるようにして歩き続ける。
「痛いなら始めから手ぇ貸してって、言えばイイんじゃね?ま、俺としては抱っこして連れて帰りたいんだけど?」
「それは嫌です。」
素直に甘えた私が嬉しいのか、珍しく思っているのか、ふざけた事を言われた。
顔はいやらしく口角を上げて笑っている。
即答で拒否だけ返すと、わざとらしい軽い音の舌打ちで返された。