第1章 三角形 case1
私が嫌な事から逃げようしても。
黙って何も言わなくても。
気持ちを汲み取って助ける人がいる。
それに甘えて、結局一人じゃ対処しようとしなくなってしまった事には違いない。
でもそれは、私の弱さの所為であって、京ちゃんが悪いように言われるのは許せなかった。
「関係なくねぇよ。アイツがお前を甘やかす限り、お前は心地好い内側の世界から出て来ないだろ。」
両方の肩をしっかりと掴まれた。
目が真剣で、さっきとは違った意味で怖い。
「俺を選べよ、小熊。外の世界見せてやっから。一生、傷付かないで生きてける訳ねぇだろ?そんなんじゃ、社会になんか出れねぇし。」
じっと、黒尾さんの顔を見つめて自分の気持ちを必死に、確かめようとする。
答えは一つじゃないし、すぐに出るものじゃない。
第一、京ちゃんの気持ちすら、まだ確かめてないのに、選ぶも何もないじゃないか。
待つと言ったのに、今度は急かしてくる。
なんで、って疑問が過ったけど、これは私の所為だ。
私の逃げ癖が、黒尾さんを怒らせた。
だって、私は結局保留の言葉すら言ってない。
この人の優しさで、話を一旦終わらせてくれただけだったと思い出した。