第1章 三角形 case1
後ろをついてきている足音が聞こえる。
荷物があるのは分かってるけど、1人で帰りたい。
撒いてしまおうかと突然走ってみた。
結果なんか分かっている。
いくら荷物を持っていようと運動部の男子が、運動能力が普通の、しかも怪我してる女子に負ける筈なんかない。
土地勘が無くても目の前の私を捕まえるなんて容易な事で、少し走った位ですぐに片手を掴まれた。
「何やってんだよ?」
逃げられないようになのか強く手首を握られて、少し痛い。
でも、離してくれと言えないのは黒尾さんの顔が本気で怒っているから。
「お前、怪我してんだろ?ちょっとは考えろ。気まずいのは分かってっから。」
自分より大分背の高い人に上から睨まれて、更に怒られてて声なんか出る訳がなかった。