• テキストサイズ

【HQ】サンカク。

第1章 三角形 case1


演技っぽい恭しさを出したお辞儀をされて。
目の前に手が差し出される。

「お姫様のお守り役をお譲り頂いてます。
…空いた手は、こちらにどうぞ。」

どうやら、手を繋ごうと言われているらしい。

なんで告白保留した相手と手を繋ぐと思っているのか、さっぱり分からなくて首を傾げる。

「お怪我をされてますから、少しでもお姫様の支えになれたらと思いまして。」

どこまで酷い怪我人だと思ってるんだ。
そんなに酷かったら、ご飯なんか食べに来てる場合じゃないでしょ。

まぁ、顔が笑ってるから冗談で言ってるのは分かるけど、イラッとした。

手を取る事はなく、断りを示して首を振った。

「一人で歩けます。大体、いつまでその設定続ける気ですか。」

苛立ちを隠せず早口で言葉を口にした。

怪我人扱いされてる事が、それをネタに手を繋ごうと言われた事が、そんなに嫌な訳じゃない。
これは八つ当たりだ。

さっきの話も中途半端で、消化しきれていない。
それなのに普通の、普段と変わらない態度で接してくれる優しさが辛い。

会話をすると、自己嫌悪の塊みたいな発言してしまいそうで、困らせてしまいそうで。
先に黙って歩きだした。
/ 304ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp