第1章 三角形 case1
瞳に溜まった涙が溢れ落ちる。
「…あー。スマン。そうやって困らせたり、泣かせたりするつもりじゃ…。」
慌てて私の頭をぐしゃぐしゃと撫でてきた。
それでも涙は止まらない。
寧ろ、優しいその行為に増々泣けてきた。
「泣き顔、見たくねーからってこの前みたいにジャージ被せる訳にはいかねーし。…少し我慢してろ。」
泣き止まない私に困ったのか、前置きのような言葉が聞こえる。
その意味を理解する前に、黒尾さんの腕に抱き締められていた。
顔が見えないように胸の下辺りに押さえ付けられて、少しだけ息が苦しい。
「返事は急いでねぇよ。ソッコーでゴメンナサイ言われなかっただけ、こっちとしちゃ有難いくらいなんだから。
…ホント、悪かった。」
黒尾さんが謝りながら子どもをあやすように私の背を撫でた。
本当は、この程度の女にフラれ掛けてる黒尾さんの方が辛くて嫌な思いしてるのに。
何も言う事は出来なくなって、人目があるとかの恥じらいもなくて、ただ涙が止まるまで黒尾さんの体に顔を埋めていた。