第1章 三角形 case1
そういえば、あのヒント。
京ちゃんがいつも見てる人。
黒尾さんが最近連絡をとってる人。
両方が自分にも当てはまる。
「あの、からかってる…とか。京ちゃんに嫌がらせしよう、とか。」
やっと出た言葉は相手をただ疑ってて。
「じゃねーよ。ホンキ。」
当たり前の言葉が返ってきて、今までの鈍さと共に凄く罪悪感を感じる。
「…ですよね。」
やっと完全に状況を理解出来た。
すぐに答えなんか出る筈もなく、下を向いて考え込む。
「返事、急がねぇよ。…赤葦の事も考えたいだろ?」
頭を緩く撫でるように数回叩かれた。
何で、この人はライバルに気を遣ってるんだろう。
普通は蹴落としたいものじゃないのかな。
出会ってから日も短いし、そこまで本気じゃないのかも。
「別に、赤葦には気ぃ遣ってねーから。小熊が、ずっと傍にいたいって言っても俺じゃ無理だろ。その点、アイツなら何時でも会えるんじゃね?」
心を読まれている気がした。
もし、黒尾さんと付き合ったら京ちゃんと今までみたいに一緒にいられる訳がない。
黒尾さんの勘違いじゃなく、京ちゃんも私の事を女として好きでいてくれたなら尚更無理だ。
今まで大切にしてくれてきた京ちゃんと離れるとか、考えられない。
だからって理由で京ちゃんと付き合う、って選択は違うと思う。
ちゃんと考えて、好きだって思える人を選ばなきゃいけない。
それが、どちらかはまだ分からない。
もしかしたら、二人とは違う別の人かもしれない。
でも、考えなきゃならない事だった。