第1章 三角形 case1
鉛筆を躊躇なく受け取って恋敵の文字に丸を付ける。
「当たり、ですか?…黒尾さん、ライバルを減らす為に他の子とくっつけちゃおう、とか良くないと思いますよ。私だって利用されてるみたいで気分悪いです。」
少しだけ怒りを込めて低めの声で言った。
黒尾さんは口元を手で押さえて何か考える素振りをしている。
分かって貰えたんだろうか。
「お待たせ致しましたー。」
嫌な空気を払うように頼んでいた料理が運ばれてくる。
食事は無言のまま始まって、フォークが食器に当たる音がやけに響いて聞こえた。
今の険悪な雰囲気を作ってしまったのは、間違いなく自分。
人の恋路に口出しとかしちゃいけないのは分かっているけど、私を利用して京ちゃんを好きな人から引き離そうとしたのは許せなかった。
静かに進んだ食事は当たり前のように早く終わり、再びただ沈黙した状態で3人でテーブルを囲んでいる。
どちらも帰ろうとか言わないし、他の会話をしようという感じでもなくて、私も黙ってジュースを口にしていた。